小池貴之写真展「Домой -シベリア鉄道-」
会期:2020.09.01(TUE)- 2020.09.06(SUN)12:00 – 19:00 (最終日 16:00 まで)
会場:ルーニィ247ファインアーツ(東京日本橋小伝馬町)
「ダモイ」。旅の途中、私は何度もこの言葉を聞き、少しドキッとしていた。
シベリアに抑留された人たちが聞いたという言葉だったからだ。
日本とロシアの間には戦争の記憶や領土問題など今もお互いの関係に隔たりがある。
北海道で育った私はそれを強く感じていた。
未知の国ロシアを知りたい。その好奇心からシベリア鉄道で旅をすることにした。
ウラジオストク~モスクワまでの約9000km の区間を何度も乗り降りし、車内の人たちと話し、人や景色を撮った。
出稼ぎ労働者、エンジニア、軍人、商人、旅人、様々な人と仕事や文化、政治、歴史などをグーグル翻訳越しに語り合った。
彼らは饒舌で気さくで自由に話す。ロシアは閉鎖的という私の想像はひと昔前のステレオタイプだったのだろう。
「Домой(ダモイ)」。これは故郷や家庭、帰るということを意味する言葉だ。
親しくなると彼らはその言葉を多用し、自慢の風景や家族や友人の写真を嬉しそうに見せてくる。
君のことも知りたいと根掘り葉ほり聞いてくるのも微笑ましい。鉱山の労働を終えて
実家へ帰る途中の男は言った。 「この鉄道があるから故郷へ帰ることができる。
家族に会うことができる。君にも会えた。故郷を見せたい。」
遠くから来た私を分け隔てなく受け入れ知ろうとする彼らの姿に感動した。
気がつくと、私と彼らの間にある汚れた窓は取り払われていた。