私が普段使っているカメラは、一本のフィルムで写真を十二枚撮ることができます。
何をどんな風に撮ったかを知るには、フィルムを現像しプリントやデータにして
見える形に起こさなければなりません。
撮影の途中で何を撮ったか思い出せるように、この春からメモをとるようになりました。
草や花を撮り歩いた日なら「草、草、花、花、花、花、花、草、草、猫、猫、草。」で
フィルム一本分。そのメモを「今日の十二枚」と呼んでいます。
今年は未曾有の感染症で何をするにも「大丈夫かな」と立ち止まる機会の多い一年と
なりました。いつもなら気兼ねなくレンズを向けていた物や場所も「撮っていい?」
と一呼吸おいてシャッターを切ることが増えていきました。
しかし、自粛生活を強いられるなかでも写真を撮り続けていると、自分がどのような
場面を「見える形に残したい」と考えているのかがより明確に分かるようになって
いきました。日常からすくい取る光景は他愛ないものばかりですが、それらは私に
生きる指針を断片的にでも見せてくれます。
「今日の十二枚」では、今年一月から禍の春を経て新しい生活様式に至った現在までの
写真から選んで展示します。「いま、このとき、こんなことがあった」という光景を
残しておきたくて撮った写真です。見返すたびに、困難な状況で写真を撮るときの
ヒントをもらっています。
皆さんの眼に私の写真はどのように写るでしょうか。ご来場を心よりお待ち申し上げます。
八木香保里 写真展
「今日の十二枚・ことしなにした?なにをみた?」
2020年12月4日(金)- 12月16日(水)
フォトカノン戸越銀座店 ギャラリー
142-0041 東京都品川区戸越2-1-3
10:00 – 20:00 木曜定休