懐かしさを覚える美しい風景を重ね合わせて、夢で見たような世界を作り上げる。
ステートメントにもあるように、市ノ川氏の作品は、筆で少しずつ塗り重ねてできあがった絵画のような厚みがある。
一言で言えば多重露光なのだが、一見巧妙な重なり具合で、多重露光と気づかされない1枚もある。
彼女の頭の中には、どの写真とどの写真を重ね合わせれば、どんな世界が生まれるのか、レシピがいくつもあるのだろう。
まるで、異なる絵の具同士を混ぜ合わせるとどんな色が生まれるか、既に知っている画家のように。
画家の目と、写真家の目を両方併せ持つ市ノ川氏ならではの作品集だ。
『I can hear
in this world
breath
What is played
beautiful harmony
melody
What comes to mind
that distant day
the scenery I saw in my dream
BREATH
聴こえるのは
この世界の
息吹
奏でられるのは
美しい調和の
旋律
浮かび上がるのは
遠いあの日
夢で見た景色』
写真を重ね合わせて遠い昔に
見た夢の中の景色のような
どこかにありそうでどこにもない場所を
描くように撮り続けている
作者の代表作品を集めた初の写真集
A5版横、60ページ 3000円