フィルム一本分、十二枚。
その日あったできごと、気になったもの、きれいだなと心が動いた何かを一つ一つフィルムにおさめる。
心に浮かんだそれらにまつわる記憶を、とつとつと綴る。
八木氏の日々のくらしの泡が、浮かんでは消えているような一冊。
私が普段使っているカメラは、一本のフィルムで写真を十二枚撮ることができます。
何をどんな風に撮ったかを知るには、フィルムを現像しプリントやデータにして
見える形に起こさなければなりません。
撮影の途中で何を撮ったか思い出せるように、この春からメモをとるようになりました。
草や花を撮り歩いた日なら「草、草、花、花、花、花、花、草、草、猫、猫、草。」で
フィルム一本分。
そのメモを「今日の十二枚」と呼んでいます。
今年は未曾有の感染症で何をするにも「大丈夫かな」と立ち止まる機会の多い一年と
なりました。
いつもなら気兼ねなくレンズを向けていた物や場所も「撮っていい?」
と一呼吸おいてシャッターを切ることが増えていきました。
しかし、自粛生活を強いられるなかでも写真を撮り続けていると、自分がどのような
場面を「見える形に残したい」と考えているのかがより明確に分かるようになって
いきました。
日常からすくい取る光景は他愛ないものばかりですが、それらは私に生きる指針を断片的にでも見せてくれます。
「今日の十二枚」では、年が明け禍の春を経て新しい生活様式に至る2020年を私の視点でまとめました。
「いま、このとき、こんなことがあった」という光景を残しておきたくて撮った写真です。
見返すたびに、困難な状況で写真を撮るときのヒントをもらっています。
皆さんの眼に私の写真はどのように写るでしょうか。
B6版縦、70ページ 2,500円